Porsche 911 (930)|ターボ時代の幕開け
1975年、ポルシェが世に放った“ターボチャージャー搭載911”。 コードネーム930――その名は、スーパーカー時代の象徴として語り継がれる。 怪物のような加速と繊細なコントロールが共存する、“暴れ馬”の誕生だった。
911に“ターボ”を積むという暴挙
930の開発は、レース用の917/30で培ったターボ技術を公道車へ移植するという大胆な試みだった。 3.0L水平対向6気筒にKKK製ターボを組み合わせ、260PSを発生。 しかし当時の技術ではラグが大きく、“一瞬静かで次の瞬間ロケット”という特性から 「未熟者が乗ると命を落とす」とまで評された。
フェンダーを膨らませたのは“必要に迫られて”
大型タイヤを収めるために生まれたワイドフェンダー。 実用上の理由からだったが、そのシルエットが偶然にもアイコンとなる。 以降、ターボ=ワイドボディという図式を生んだのはこの930が最初だった。
リアスポイラーは“機能美の象徴”
「ホエールテール」と呼ばれるリアウイングは、 ターボ用インタークーラーの収納とダウンフォース確保を両立するための設計。 空力的にも冷却的にも必要不可欠なパーツだったが、 結果として930のシルエットを決定づける要素となった。
ブレーキは“917譲り”の本格派
当時の市販車で最強クラスと言われたブレーキシステムは、 ル・マン制覇マシン「917」から技術を転用。 ハイパワーを受け止めるため、 当時としては異例の大径ベンチレーテッドディスクを採用していた。
ターボの“キック”を愛したテストドライバー
開発ドライバーの一人、ヘルムート・ボットは「930はドライバーを選ぶ」と語っている。 だがその特性こそポルシェらしさであり、 「コーナー出口での暴力的なブーストこそ魅力だ」と断言した。
北米市場の衝撃と、伝説の“ターボ・バッジ”
アメリカ導入当初、930 Turboは他を圧倒する性能で“European Supercar”と呼ばれた。 トランクの右下に輝く“Turbo”バッジは、ステータスシンボルとして羨望の的に。 “911の頂点”というイメージを世界に植え付けたのもこのモデルである。
3.3L化と共に“完成形”へ
1978年のマイナーチェンジで排気量は3.3Lへ拡大、インタークーラーを追加し300PSオーバーへ。 足まわりと冷却性能の改善により扱いやすさも向上し、 930 Turboは“完成された暴れ馬”としてその地位を確立。